線維筋痛症、太極拳の効用

線維筋痛症は全身の強い痛みを主な症状とする慢性の病気だ。原因は不明で、特効薬はまだない。この病気の症状の改善に太極拳が有効という論文が、ニューイングランド医学誌に8月掲載された。

研究は米国の一大学病院で行われた。線維筋痛症の患者66人をくじ引きで太極拳群(33人)と比較群(33人)に分けた。患者は平均約50歳、病気にかかっている期間は平均11年だった。

太極拳群には、1人の指導者による1回60分、週2回のレッスンを12週間続けた。自宅でも毎日20分以上の練習をするよう指導した。比較群には、線維筋痛症についての健康教育40分とストレッチ20分からなる1回60分の指導を、太極拳群と同じ回数行った。自宅でも毎日20分のストレッチをするよう指導した。

その結果、線維筋痛症の症状(痛み、身体機能、倦怠感、うつ、不安など)の検査(100点満点、点数が高い方が症状が強い)で臨床的に有意義な改善(8.1点以上の低下)を示した割合は、12週後の時点で、太極拳群が78.8%と、比較群の39.4%を大きく引き離した。24週後でも太極拳群(81.8%)は比較群(51.5%)より改善が大きかった。太極拳による有害作用はなかった。
著者らによると、対象者を太極拳群と比較群に偏りなく分け、線維筋痛症への効果を調べた臨床試験は初めて。今回の結果を「予備的」と位置づけ、さらに大規模で長期間の研究が必要としている。

研究に対する論評は、今回の「小規模な臨床試験による劇的な結果」をさらに追試で確認する必要があると指摘。その間、医師が処方箋に「太極拳」と書くのは時期尚早としながらも、線維筋痛症の患者が太極拳のような運動に関心を示すのをサポートするのは理にかなっていると評価している。

この研究は、米国立補完代替療法センターなどの助成で行われた。太極拳のような民間療法を評価するしっかりした研究を、公費で行う重要性を感じさせる。

(2010年9月27日付 朝日新聞東京本社夕刊から)

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