大腰筋はおおらかに気持ちよく鍛えます。

大腰筋が衰えると様々な障害が出てきます。お肉で言うとヒレ肉ですね。

太極拳では、ゆっくり動いて大腰筋の動きをよくとらえます。筋と言っても筋肉の方ではなく、筋と骨のつながりをつかみ取ります。そのつながりが柔らかく多様であればあるほど、腰は鬆(す)の入ったような軽い感覚になり、すなわち太極拳での鬆腰となります。

大腰筋と背骨のつながりは、その刺激が真っ先に刺爬虫類の脳といわれている脳幹の原始脳に伝わります。脳幹は、間脳、中脳、橋、延髄で構成されていて、人間が手を使い始めたことによって、脊髄が発達したものとされているところです。

套路やエアロタイチを動いているときに、大腰筋が緊張しているかどうかを感じながら、その部分がリラックスして気持ちよくなるように動くようにします。

その気持ちよさと自分の心の動きがしっかりと身体に染みつき、どんどんと大腿筋が正常に躍動し始めます。そして中腰の姿勢が、深層筋である大腰筋を表層の随意筋に従わせて動かすのです。中腰の姿勢が維持できる太極拳の運動がそれを持続的に可能にするので、ものの5分もすると脳幹が大きく刺激され、生命の根幹が生き生きとしてくるのです。

少しのことですが、腰を落としたり、のばしたり、歩幅や足の置く場所、上体などの動きによって、浅部や深部、その部位が、一本ではない細い筋肉の集まりである大腿筋の使う場所が変わってくるのです。武道の動きで効率的に重心移動や、下半身の上下運動、バランス運動を繰り返すことでその全ての部位が補強されます。

特に大腿筋は深層筋であり、ゆっくり動くことで鍛えることが出来ます。速い動きは表層の筋肉を多用するので、どうしてもそれにとらわれてしまいます。

又、安全域を考えて制定された範囲内の動きでは、その部分は衰えるばかりであり、又刺激もされません。少し自分の安全域を超えていくような気持ちで、どんどんと安定域を広げていきます。自分で少しバランスが崩れそうな部分までを少しずつゆっくりと套路や、エアロタイチなどの練習で広げていくと、そのバランスを保とうとする大腰筋がしっかりと育ってきます。太極拳をやっている人で腰が悪い人が多いのは、制定された太極拳を安全域で行っているため、大腰筋はますます退化し、刺激もされないので、脳幹もそれでいいものとして全体の運動能力を低下させていくのです。

大切なことは、形や姿勢、決められた動きなど守らず、条件をつけず、おおらかに気持ちよく、生き生きと動くということです。

楊無敵と言われた太極拳の楊式の創始者、楊露禅は套路の写真などは残していませんが、楊式を世界中に広める基礎を作った、その孫に当たる楊家第三代の楊 澄甫などの套路の写真をみればわかるように、蹬脚などの時の套路の足は今の太極拳のように高く上げることもなく膝も曲がり、そのほかの型を見ても自由な動きであったことが伺えます。今の制定太極拳で太極拳の要求だと言われているような形や姿勢に当てはめると、楊 澄甫はなってないということになります。楊無敵と言われた楊露禅は型を教えることなく、ひたすら対錬という散手を中心にゆっくりと動くことを修行させ、その備忘録として108の型をつなぎ合わせて套路という単練の型のつながりを作り上げ、それを毎日弟子達に自宅などで行わせていたということです。単純に、つなぎ合わせることが出来たのが108だったと言うことであり、それ以上に多種多様に太極拳の型はありました。それを今はある形にまとめて体裁と見た目や要求する条件を整え太極拳だとして行っていることが、本来の太極拳から大きく遠ざかる原因だとも言われています。このように大腿筋一つをとっても、おおらかな動きで初めて健全になるものであり、決められた型にはめていった太極拳で大腰筋が育つものではないことがおわかりいただけると思います。

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